成年後見制度の利点と課題

【利点】
成年後見関係の申立ての動機は、1位が預貯金の管理・解約となっています(裁判所「成年後見関係事件の概況:平成26年1月~12月)。本人確認が必要な預貯金口座からのお金の引出しには、成年後見制度を使わざるを得ません。同様に、不動産の処分等の手続をするという申立ての動機もあります。
最近では、相続手続上、例えば父親が亡くなり、相続人である母親が認知症というケースにおいて、遺産分割や放棄などの法的なことが一切できなくなることから、成年後見制度を使うこともあります。
【課題】
成年後見制度を利用する人の数は、平成26年12月現在、18万5000人前後といわれています(上記裁判所資料)。認知症及びその予備軍は全国で860万人以上とされている実態から比べれば、この数字は少ないといえます。
利用する人が少ない理由として、後述の手続や管理の問題と合わせ、そもそも成年後見制度を使う必要がないということが挙げられます。
支えるべき家族が近くにいれば、預貯金等の財産管理や不動産、賃貸物件の管理、さらには入院入所手続なども含めて、後見人としてではなく家族として行うことができますから、成年後見制度の利用は不要になります。
そしてもう1つは、成年後見制度を利用する際の負担が大きく、できれば使いたくないという人が多いということが挙けられます。成年後見制度を使うと、後見人は年1回、裁判所へ財産の状況や1年間の収支、財産目録等を作成し報告する義務があります。
また、成年後見制度を使ってしまうと、できることが限られてしまいます。例えば、親元に年に一度家族が集まるような場面で、例年どおり親が全員の食事代を払っていたものが、その制度を利用すると会食代は割り勘で参加者の個人負担となります。
成年後見制度は、「対象者の財産を減損させない」ことが目的ですので、「家族や本人の想い、希望」に必ずしも応えられる制度ではないことが、制度利用を躊躇させる理由といえます。
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