家族信託の場合の登記簿は

登記簿
Q
信託契約を結ぶことにより、所有する不動産の登記はどうなるのですか。

不動産を信託財産として、受託者に管理を任せた場合、登記簿に不動産の管理を担う受託者の名前が記載されるというのが、その大きな特徴となります。
今まで所有者として登記簿に載っていた人に代わり、財産の管理者でざる受託者の名前が形式的に欄に入ることになります。
ただ、これは受託者としての肩書がついたうえでの起債があって、あくまで財産権が移ったわけではありません。委任契約や管理委託契約と違い、信託契約ではこのように受託者が形式的な所有者になります。

●登記簿に受託者の名前が入ることによるメリット
  • 受託者が所有者として財産の管理が実現可能に
    賃貸マンション、アパートや駐車場などの収益物件であれば、所有者が認知症等によって判断能力を喪失した後であっても、借り手その他との契約行為を受託者が貸主として行うことができます。
  • 受託者が所有者として財産の処分が現実可能に
    受託者が認知症等によって判断能力を失った場合であっても、相続税対策などで所有する不動産を売却する必要があるときには、受託者が売主として売買契約を結ぶことが可能です。
●登記簿に記載される内容
  • 所有権に関する事項
    下記の記載例のとおり「所有権移転」と記載され、その原因として「令和〇〇年〇〇月〇〇日信託」と記載され、下に受託者名が載ります。信託を原因とする所有権移転は、受託者があたかも所有権者のように各種の契約行為できるようにするものですが、実態的財産権の移転はありません。
財産の管理処分権限を持つ者として形式的に所有者欄に記載される
権利部(中区)(所有者に関する事項)
順位番号登記の目的受付年月日・受付番号権利者その他の事項

1

所有権移転平成25年12月1日
第〇〇〇号
原因:平成25年12月1日売買
所有者:東京都杉並区
山田父朗
2

 

所有権移転
令和2年12月1日
第〇〇〇号
原因:令和2年12月1日売買
所有者:東京都武蔵野市
山田子太郎
信託余白信託目録第△△豪
信託目録調整余白
番号受付年月日・受付番号予備
第〇〇号平成25年1月25日
第〇〇〇号
余白
①委託者に関する事項東京都杉並区××丁目〇番〇号
山田父朗
⇒託した人(委託者)
②受託者に関する事項東京都武蔵野市×丁目〇番〇号
山田子太郎
⇒託された人(受託者)
③受益者に関する事項東京都杉並区××丁目〇番〇号
山田父朗
⇒収益を得る人(受益者)
④信託次項信託の目的
受益者の資産の適正な管理及び有効活用を目的とする

信託財産の管理方法

  1. 受託者は、信託不動産について、信託による所有権移転または所有権保存の登記手続を行うこととする。
  2. 受託者は、信託不動産を第三者に賃貸することができる。
  3. 受託者は、裁量により信託不動産を減価処分することができる。
  4. 受託者は、信託の目的に照らして相当と認めるときは、信託不動産となる建物を建設することができる。

信託の終了事由
本件信託は、委託者兼受益者及び受託者山田父朗が死亡したときに終了する。

その他の信託の条項

  1. 本件信託の受益権は、受益者及び受託者の合意がない限り、譲渡、買入れその他担保設定等すること及び分割することはできないものとする。
  2. 受益者は、受託者との合意により、本件信託の内容を変更することができる。
  3. 本件信託が終了した場合、現金の信託財産については、山田子太郎に帰属するものとする。
死亡後の資産の承継先を指定できる
  • 信託目録
    登記簿の「信託目録」には信託契約の詳細が記載されます。
    ●信託者に関する事項…誰が預けたのか
    ●受託者に関する事項…誰が預かったのか
    ●受益者に関する事項…この不動産から実質の利益を得るのは誰か
    ※この時点で預けた人と利益を得る人がイコール(同一人物)の場合、財産の移転はなかったということで、贈与税や取得税などの課税は基本的に発生しません。
    ●信託の目的…何を目的としたか
    ●信託財産の管理方法…受託者はどこまで権限を持っているか
    ●信託の終了事由…この信託はいつ終わるか

参考:【財産を円満に管理・相続するために】基礎からわかる「家族信託」Q&A
   一般社団法人 家族信託普及協会
   企画・制作:清文社

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