財産の特定の仕方
財産の書き方の基本は、誰が見てもその財産を特定できるように、具体的かつ正確に書くことです。
財産の書き方を種類別に掲げますので、遺言書を書くときの参考にして下さい。
【不動産】
「全ての不動産」
「全ての土地」
「〇〇市〇〇町10番1の土地」
「全ての建物」
「〇〇市〇〇町10番地1家屋番号10番1の建物」
「〇〇市〇〇町10番1の土地上にある未登記建物」
- 土地は登記記録の所在と地番、建物は登記記録の所在地と家屋番号で特定するのが一番確実です。この登記上の地番や所在は、住所の表示とは異なります。
- 地番や家屋番号は、法務局で取得できる不動産の 「登記事項証明書」に記載されています。
- 土地の地積や地目、建物の種類・構造・床面積を遺言書に書く場合は、「登記事項証明書」に基づき、正確に書きましょう。
- 私道部分の土地を書き漏らしてしまうことがあるので注意しましょう。私道は、固定資産税が課税されないことが多く、また近隣の人たちと共有していることも多いので、所有しているという実感が薄く、つい忘れられがちです。私道を書き漏らしてしまうと、折角遺言があっても、結局は私道の相続人を決めるための遺産分割協議を相続人全員でしなければならなくなります。
敷地に接している道路がある場合は、その道路が誰の所有なのかをよく確かめておきましょう。 - 不動産を共有で持っている場合は、共有持分の記載方法に注意しましょう。「共有持分の全部」と書くべきところを「何分の何」という表現をしてしまうと、共有持分の更に一定割合だけと誤解
されてしまうことがあるからです。「共有持分の全部」と書くか又は持分については何も書かない方が誤解されずに済みます。
【現金・預貯金】
「現金」
「〇〇銀行△△支店 普通預金」
「〇〇銀行△△支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇」
「ゆうちょ銀行 通常預金、定期預金」
「ゆうちょ銀行 通常預金 記号〇〇〇〇番号〇〇〇〇」
- 銀行行預金の場合は、銀行名 ・支店名 ・預金の種類 ・口座番号て特定し、郵便貯金の場合は、貯金の種類 ・記号番号で特定します。
一つの金融機関に複数の口座があって、これを複数の相続人に分けて相続させたいときは、通帳などをよく確認し、口座番号や記号番号まで正確に書きましょう。 - 預貯金の残高は相続開始までに変動するので、残高の一部を譲る場合は別として、書かない方がよいでしょう。
【有価証券】
(株式) 「〇〇薬品工業株式会社の株式 全部」
「〇〇薬品工業株式会社の株式 1000株」
(投資信託)「投資信託〇〇・ファンド 全部」
「投資信託〇〇・ファンド 1万口」
- 有価証券は取引していた証券会社名・支店名なども付記しておくとよいでしょう。また特定の銘柄全てを相続させたいようなときは、株数、口数は相続開始までに変動する事があるので、記載は省略した方がよいでしょう。
【債権】
「〇年〇月〇日に山川太郎に貸した貸付金 金100万円」
「〇年〇月〇日の〇〇商会に対する売掛金」
「私の個人事業における売掛金債権の全部」
- 貸付金や売掛金は、発生した日付や対象商品、相手方の氏名・名称などで特定します。
【自動車】
「〇〇自動車 マ キシム 横浜333め5〇3〇、車台番号 AH 34-3〇4 1 1 3」
- 相続後に陸運局で名義書換をする必要がありますから、メーカー名や車種だけでなくナンバープレートの番号(車両番号)や、車検証に記載された車台番号を正確に書きましょう。遺言書を書いた後に自動車を買い換える可能性がある時や、1台しか所有しない時は、単に「乗用車」と書くだけでもよいでしょう。
【貴金属】
「指輪(ダイヤモンド)〇個、ネックレス(真珠)〇個」
「貴金属全部」
- 複数の同じ種類の貴金属を別々の人に譲りたい場合は、それぞれ特定できるように更に詳しく書いておく必要があります。
【動産】
「動産全部」
「自宅内にある家財道具 一式」
「別荘にある富士山の絵画 1点」
- 動産を置いてある場所が何箇所かあるときは、その場所を上記のように記載しておきましょう。
【その他】
(出資金)「〇〇農協に対する出資金」
「その他一切の財産」
- 遺言書に記載がない財産があると、その財産の帰属を相続人全員の遺産分割協議で決めなければなりません。そうなると、遺言書を書いた意味が半減することもあります。「その他一切の財産」についても、相続させる人を決めて、遺言書にきちんと書いておきましょう。
【債務】
「〇〇銀行△ △ 支店からの借入金」
「〇〇商店の買掛金」
「未払い租税公課」
- 債務は相続人全員が法定相続分の割合に応じて負担します。遺産をもらってももらわなくても、債権者から法定相続分の割合に応じた支払いの請求がくれば、これに応じなければなりません。
しかし遺言で債務の承継者を指定しておくことは可能です。これが相続人にとって有益な場合があります。遺言で債務の承継者を指定し、債務者 がその指定に同意すれば、他の相続人は支払いを免れることができるからです。
【死亡保険金】
被相続人が加入していた生命保険の死亡保険金は、その保険契約で「受取人」として指定された者が受け取ることができます。
死亡保険は相続財産ではありませんので、たとえ相続人であっても、受取人の指定を受けていない者は保険金を受け取る権利がありません。なお死亡保険は、生命保険会社との契約によるものなので、遺言に記載する必要はありません。