遺言入門②

遺言書

実際の遺言書を書く前に、まず遺言の方式やどんな場合に遺言が無効になってしまうかなど、基礎的なことを知っておきましょう。
遺言は、法律で厳格にルールが定められています。
せっかく書いた遺言書が無効になったり、願いどおりに実現されなかったりしたら大変です。遺言書を書く前に、最小限の知識を得ておきましょう。

公正証書遺言の長所短所

【長所】
公正証書の遺言は、法律専門家である公証人が関与するので、形式不備や 内容不備で無効になる恐れがありません。
また、遺言書の原本が公証役場に保管されるので、遺言書が破棄されたり、隠されてしまったり、変造される心配がなく、紛失してしまうこともありま せん。家庭裁判所の検認を受ける必要がありません。
【短所】
公正証書の遺言書を作成する際には、証人2人の立ち会いが必要です。そのため、証人2人を手当てしなければならないのが難点です。
また、公証人の手数料がかかります。手数料の計算方法は少し複雑ですので、事前に公証役場に問い合わせておいた方がいいでしょう。

公正証書遺言
長所短所
  • 法律専門家である公証人が関与するので、形式不備や内容不備で無効になる恐れがない
  • 原本が公証人役場に保管されるので、変造・隠匿・紛失・破棄の心配がない
  • 検認の手続が必要ない
  • 費用がかかる
  • 証人2人が必要

自筆証書遺言と公正証書遺言には、それぞれ長所と短所がありますが、公正証書遺言には、自筆証書遺言とは比較にならないほどの確実性と安心感があります。
複雑な内容の遺言書を作成するときなとは、公正証書にしておくほうが望ましいと言えます。
司法書士は、公正証書遺言の作成のサポートもすることができますので、お気軽にご相談ください。

遺言書が無効になるケース

せっかく書いた遺言が、無効となっては困ります。どのような場合に遺言が無効になるのでしょうか?

  1. 15歳に達しない者の遺言
  2. 遺言能力に欠ける人の遺言
    民法は、遺言者は、遺言をする時において、その能力を有しなければならないと規定しています。
    例えば、遺言書に記載した意味や内容を理解できない人の遺言や、正常な判断ができないときの遺言は無効ということになります。
  3. 他人に無理やり書かされた遺言
    遺言はその人の自発的な意思で作られるものです。
    他人に強制的に無理やり書かされた遺言は、真意によるものとは認められないので無効です。
  4. 遺言の方式やルールに従わない遺言
    遺言にはいくつかの方式があり、それぞれルールが決められています。例えば、同一の証書で2人以上の者が連名で作成した遺言は無効です。そのほか、自筆証書遺言であれば4つのルール
    1. 本文の内容
    2. 作成日付
    3. 作成者氏名
    4. 作成者の印鑑を自分で押す

    を守らなければ無効です。公正証書遺言でも、証人になることができ ない者が証人として立ち会。て作成された場合は無効です。
    どんな遺言でも、決められた方式やルールに違反したものは無効になります。

  5. 公の秩序又は善良の風俗に反する遺言
    法律で、公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効とされています。これは遺言にも当てはまり、公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする遺言は無効となります。例えば、不倫の関係維持を条件に財産を遺贈する遺言や殺人の報酬として財産を遺贈する遺言などが該当します。

上記のほかにも、遺言者の意思が読み取れない遺言や表現が曖昧で財産が特定できないような遺言なども無効(又は一部無効)な遺言といえます。

新・遺言制度コラム
法務局による遺言書保管制度

今回の民法改、とあわて新たな遺言書の制度が創設されました。
遺言書保管法と呼ばれる法律で令和2年7月10日に施行されます。この制度は、法務省令で定められた所定の様式で自筆の遺言書を作成し、一定の手数料を納めて法務局に遺言書の保管の申請をするというものです。
遺言書が法務局に保管されるので、紛失の恐れはなくなります。
遺言者が亡くなった後は、相続人が法務局に一定の手数料を納めて遺言書の保管の有無の確認の申請をすることになりますが、自筆証書遺言で必要な家庭裁判所での検認は不要とされています。
自分で遺言書を書いたがその保管に不安がある人や、相続人に遺言書の検認の手間を負わせたくない人にとっては、公正証書の作成よりも手数料が安くできる点でメリットがあるといえます。自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的な位置づけとしてニーズがでてきそうな制度です。
ただし遺言者の死後、自動的に法務局から相続人に遺言書があることが通知されるわけではないので、遺言者は、生前に相続人に法務局に遺言書が保管されていることを知らせておく必要があると考えられ、生前に遺言書の存在を知らせたくない人には向かないかもしれません。

参考:【令和新版】誰でも作れる遺言書「レッツ遺言セット」
   神奈川県司法書士協同組合

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