遺言書文例集②

遺言書

遺言の知識や作リ方のルールが理解できても、いざ自分で書こうとすると、なかなか文章が思い浮かばないものです。ここでは遺言の文例をケースごとにいくつか例示しました。
遺言書は、縦書きでも横書きでもどちらでも構いません。ここでは、都合上横書きにしてあります。

●遺言書作成例(5)財産を慈善団体に寄付したい

慈善団体などに財産を寄付したいときは、寄付する団体の正式名称や住所を正確に書きましょう。また、なかには寄付の受け入れを断る団体もありますから、寄付の受け人れが可能かどうかを、事前にその団体に確認しておきましょう。

遺言書

  1. 下記の団体に、下記財産を含む全ての財産を遺贈する。
    住 所:〇〇市〇〇町〇〇番地〇〇
    名 称:公益財団法人〇△△会

    財産の表示
    〇〇市〇〇町〇〇番〇の土地
    〇〇市〇〇町〇〇番地〇
    家屋番号〇〇番〇の建物
    〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇
    〇〇会社の株式 〇〇株( 〇〇証券〇〇支店)

  2. 遺言執行者として下記の者を指定する。
    住 所:〇〇市〇〇町〇〇番地〇〇
    氏 名:〇〇△△
    職 業:〇〇〇

令和〇〇年〇〇月〇〇日

〇〇市〇〇町〇〇番地〇〇
遺言者 〇〇〇〇 

●遺言書作成例(6)全ての財産を内縁の妻又は夫に遺したい

正式な婚姻届を出していない内縁の夫婦間では、互いに相続権がありません。内縁関係の相手に財産を遺してあげたいときは、遺産を遺贈する内容の遺言書が必要です。遺言書には、遺贈する相手方の住所、氏名、本籍、生年月日を正確に書きましょう。

遺言書

  1. 全ての財産を、内縁の妻である下記の者に遺贈する。

    本 籍:〇〇県〇〇市〇〇町〇〇番地〇〇
    住 所:〇〇市〇〇町〇〇番地〇〇
    氏 名:〇〇△△
    生年月日:昭和〇〇年〇〇月〇〇日

  2. 遺言執行者として上記〇〇△△を指定する。

令和〇〇年〇〇月〇〇日

〇〇市〇〇町〇〇番地〇〇
遺言者 〇〇〇〇 

●遺言書作成例(7)配偶者の居住を確保したい

民法改正により創設された配偶者居住権を定める遺言書です。
配偶者居住権の詳しい内容については下記のコラムをご覧ください。
なお配偶者居住権は2020年4月1日以降に作成された遺言書で認められるものですので、同日より前に作成された遺言書は配偶者居住権については無効となってしまいますのでご注意ください。

遺言書

遺言者は次のとおり遺言する。

  1. 遺言者の長男〇〇△△ に下記土地建物を遺贈する。但し、建物については、次条に定める配偶者居住権の負担のついた負担付遺贈とする。
    不動産の表示
    〇〇市〇〇町〇〇番〇の上地
    〇〇市〇〇町〇〇番地〇
      家屋番号〇〇番〇の建物
  2. 遺言者は、私の妻〇〇△△に前条に記載した建物に生涯無償で居住する権利(配偶者居住権)を遺贈する。
  3. 長男〇〇△△は、本遺言書の効力発生後、前条に定める妻の権利を保全するための登記手続きに協力すること。
  4. 遺言者は、妻〇〇△△ に、第1条に記載する土地建物を除く現金預貯金その他一切の財産を相続させる。

以上遺言する。

令和〇〇年〇〇月〇〇日

〇〇市〇〇町〇〇番地〇〇
遺言者 山田太郎 

新・遺言制度コラム
配偶者居住権

配偶者居住権とは、相続開始時に被相続人の所有する建物に居住する配偶者が、相続開始後、死亡するまでその建物を無償で使用できる権利です。民法の改正により新たな制度として制定されました。
従来自宅はあるが、他にめぼしい相続財産が無いといった場合に、他の相続人に対する代償金を支払うための預貯金が無いため、配偶者が自宅を相続することができず、自宅を手放して転居せざるを得ないという状況に追い込まれることがありましたまた。配偶者以外の相続人に相続させる旨の遺言や遺贈があった場合に、他の相続人などから立ち退きを求められると、配偶者は立ち退かざるを得ないことになっていました。しかし高齢者が今まで長年暮らしてきた自宅を立ち退くということは、精神的にも肉体的にも大変負担が大きく、過酷な状況に追い込まれます。そこでこのような高齢者の居住権を保護しようと、今回の改正により新たな終身無償で住み続けることが出来る権利「配偶者居住権」が創設されました。
配偶者居住権は、(1)配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していたこと、(2)その建物について配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の遺産分割、遺贈又は死因贈与がされた場合に成立します。
ここでいう配偶者は、法律上被相続人と婚姻していた配偶者を指し、いわゆる内縁関係の場合は含まれません。
また配偶者居住権の目的である建物は、第三者と被相続人が共有していた場合には、第三者の権利が害されてしまいますので成立させることはできません。
配偶者居住権は配偶者の居住権を保護するために特に認められた制度ですので、配偶者はこの権利を第三者に譲渡したり出来ず、またその配偶者が死亡した場合、当然に消滅するため相続することも出来ません。
配偶者居住権が設定されている場合、固定資産税などの必要費は配偶者が負担しますし、通常かかる修繕費用なども配偶者が負担します。
配偶者居住権を第三者に対抗するためには登記が必要となります。例えば、法務局で建物について配偶者居住権の登記をしておけば、仮に自宅が第三者に売却された場合でも新しい所有者に対抗できることが出来ることになります。
皆さんも是非この便利な配偶者居住権を遺言に取り入れてみてはいかがですか?

参考:【令和新版】誰でも作れる遺言書「レッツ遺言セット」
   神奈川県司法書士協同組合

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