遺言

遺言

遺言がある場合とない場合ではどう違う?

相続をめぐるトラブルは、遺言書がなかったことが原因となる場合が多くあります。亡くなったKさんには子供も直系尊属もいなかったため、遺産を妻とKさんの兄弟が相続することになりました。兄弟の中には死亡している者もいて、その子供が相続人になっており、調べると法定相続人は30人にも達することがわかりました。
このような子供のいない夫婦の場合、夫が生前に「妻に全財産を相続させる」との遺言書を書いておけば、妻は全財産を誰に遠慮することなく相続できるのです。遺言とは、自分の考えで自分の財産を処分できる明確な意思表示です。遺された者の幸福を考える上でも、遺言は元気なうちにしっかりと書いておくべきです。

正しい遺言書を残すには

将来のトラブルを未然に防ぐためにもぜひ書いておきたい遺言書。ただ、たとえ夫婦でも、同一の書面に二人で一緒に遺言すると無効になります。遺言には次の種類があります。

普通方式自筆証書遺言

手軽に作成できるもので、全文を自署し、日付・氏名を入れ、押印することが必要です。内容の秘密保持には適していますが、偽造・変造・滅失・隠匿・未発見のおそれがあります。

秘密証書遺言内容を記載した遺言書(自筆である必要はありません)に遺言者が署名押印し、封筒に入れて封印し、公証人と証人に提出してその確認を受けます。
公正証書遺言証人二人以上の立会いのもとに公証人が遺言書を作成します。偽造・変造等のおそれはなく、公証人が内容を確認できますので、後日無効になる心配もありません。また他の遺言方法と異なり、後に家庭裁判所での検認(下記参照)手続が不要となり、遺言中で遺言執行者を定めておけば、不動産の名義変更にも便利な方法です。公証人の費用が必要ですが、もっとも安全で確実な方法といえます。
特別方式危急時遺言死亡の危急に迫った者や、遭難した船舶中にある者などが行えるものです。
隔絶地遺言

●検認
遺言書(公正証書による遺言を除く)の保管者またはこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなけれはなりません。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなけれはならないことになっています。
検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状・加除訂正の状態・日付・署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。

遺言で何ができるのか

●相続分の指定
誰にどの割合で相続させるかを指定できます。民法の法定相続分を変更できます。

●認知
婚姻届を出していない男女間に生まれた子を、親が戸籍上の手続きによって自分の子だと認めることです。遺言によって認知されてもその子は相続人になれます。

●遺贈や寄付による財産処分
遺産を特定の相続人や法定相続人と関係ない第三者に贈ったり(遺贈)、公益法人などに寄付できます。

こういった事柄のほかに、遺言では、後見人と後見監督人の指定/相続人の廃除や廃除の取り消し/遺産分割方法の指定またはその委託/相続人相互の担保責任の指定/遺言執行者の指定または指定の委託/遺留分減殺方法の指定などができます。

遺言があまりにも不公平で納得できない場合

いざ遺言書を開けてみると、全財産を老人ホームに寄付するというものだった。あるいは相続人のうちの一人だけに土地・建物を相続させると書いてあった。
残された者にとってあまりにも不公平な内容だったという話はよく耳にします。こんなときのために遺留分(いりゅうぶん)という制度があります。遺留分とは、たとえ遺言者の意思が尊重されるとしても、最低限度これだけは相続人に残しておかなければならないという、いわば遺言によっても奪われない相続分のことです。
民法では遺留分は次のように規定されています。

  1. 兄弟姉妹には遺留分はない
  2. 直系尊属のみが相続人である場合は全遺産の
  3. 上記以外の場合はすべて全遺産の2分の1

もし遺言に納得できないときは、遺言の要件が整っているか、まず確認すべきでしょう。そして遺留分が侵されていたら、それを取り戻す権利があります。これを減殺請求権といいます。遺留分の減殺請求権は、相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年、相続開始後10年で時効になりますので注意してください。

参考:司法書士アクセスブック「よくわかる相続」
   日本司法書士連合会

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