成年後見の利用例

具体的な成年後見の利用例を見てみましょう

あるところに、太郎さん(80 歳)と花子さん(78歳)夫婦が二人きりで住んでおりました。二人には他に身寄りはなく、買い物などもいつも二人で出かけていましたが、太郎さんは数年前から認知症になりましたので、最近は、花子さんがひとりで買い物に出かけ、太郎さんは家で留守番をすることが多くなりました。
ある日のこと、花子さんがスーパーの買い物から帰ってみると、部屋の中に真新しい羽根布団か置いてあり、その上に太郎さんがニコニコと座っているではありませんか。不思議に思った花子さんは、太郎さんに「これはどうしたの?」と尋ねると、「よく分からないけど、親切なお兄ちゃんが来て、『これを使ってみて。寝心地がいいよ。』と布団を置いていった。」とのことです。傍らには羽根布団購入の契約書が置いてあり、購入代金は40万円と書かれてありました。
びつくりした花子さんは、直ぐに消費者センターに相談して、今回は業者に引き取ってもらうことができ、なんとかことなきを得ましたが、このまま太郎さんの認知症が進んでいくと、またこのような契約をしてしまうのではないかと、とても不安になりました。
そんなとき、近所の人から司法書士を紹介され、不必要な契約を取り消したり、預貯金や年金の管理など太郎さんの財産をきちんと守ってもらえる成年後見制度というしくみがあることを聞きました。
自分のことで手一杯の花子さんは、今後のことも考えて、太郎さんのためにこの成年後見制度を利用するため、その司法書士に頼んで家庭裁判所に後見開始の申立を行うことにし、その際花子さんが高齢であるためその司法書士を後見人の候補者としました。そして、数か月後に、家庭裁判所は、後見を開始する審判をし、司法書士を太郎さんの成年後見人に選任しました。
成年後見人となった司法書士は、太郎さんの預貯金や年金などの収支管理や介護サービス契約を結んでヘルパーの手配をしたり、役所でのいろいろ面倒な手続を代わりに行ってくれたので、花子さんは安心して買い物に行けるようになり、太郎さんも今までと変わりなく平穏に生活を続けることができました。
ところが、5年後に太郎さんが突然亡くなり、花子さんはひとりばっちになってしまいました。太郎さんが死亡すると成年後見人としての役目は終わるのですが、太郎さんの成年後見人をしていた司法書士は、お葬式の時にもいろいろと相談に乗ってくれるなどして花子さんを助け、最後に太郎さんの財産を整理して花子さんに引き渡しました。
四十九日の法要も終わりしばらく経ってから、花子さんは、家や土地の名義か太郎さん名義のままになっていることに気づきました。そこで、司法書士にお願いして、唯一の相続人となった花子さん名義へ相続登記手続をしてもらいました。
それから3年の月日が経ち、またまた元気な花子さんも、なにぶんひとりぼっちの身ですから、自分の身に何かあったときのことを心配するようになりました。また最近は少しずつ物忘れも多くなってきて、このままでは、自分もかっての太郎さんのようになってしまうのではないかと、不安の日々か続くようになりました。
そんなとき、太郎さんの成年後見人だった司法書士が、「将来、自分が認知症になったときに備えて、元気なうちに信頼できる人に認知症になった後のことを今からいろいろ頼んでおける制度もありますよ。」と話していたことを思い出し、早速手紙を書いてみることにしました。

手紙内容

前略ご無沙汰しておりますが、お健やかにお過ごしでしょうか。
主人が亡くなってはや3年、初めて先生にお会いしてから8年が過ぎようとしています。子どものいない私たら夫婦は、二人で何とか生活してきたものの、主人の認知症が進み、預貯金の管理や役所での手続など、私一人の肩にのしかかってきて、本当に困っていました。そんな時、近所の方からご紹介いただき、藁をも掴む気持ちで先生の事務所にお伺いしました。私が心配事を並べ立てるのを、じっくり耳を傾けて丁寧に答えてくださいましたね。「今まで頑張ってこられたんですね」という先生のお言葉は今でも忘れられません。

主人の成年後見人になっていただいてからは、何度も困っていることはないかどわざわざ自宅まて訪ねて来てくださいました。ヘルパーの手配や役所での手続などをしていただいたおかげで、できるだけ長く自宅で生活したいと言っていた主人の希望を叶えることができました。私も雑事に煩わされることなく主人と自分のことだけを考えて生活することができました。改めてお礼申しあげます。そして、お仕事を超えて暖かく接してくださる先生のお人柄に触れるうち家族のように信頼できる存在になりました。ありがどうございました。

私も最近は将来に備えて、以前先生から伺った、任意後見という制度を利用したいと思うようになり、是非先生にお願いしたいと考えております。
また先生のところにお伺いすると思いますのでその節はよろしくお願いいたします。お近くにおいての際は、ぜひお立ち寄りくださいませ。

草々

参考:司法書士アクセスブック「よくわかる成年後見」
   日本司法書士連合会

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